2011年7月4日月曜日

去るも地獄とどまるも地獄(ジャズ宣言)

僕の所属させていただいているゼミの担当教授、小倉利丸さんに教えていただいた平岡正明さんの本を運良く手に入れることができました。
平岡さんは日本の評論家で、ジャズを音楽学的にだけでなく、社会学的な視点をもって分析してエッセイとして発表した人です。今回入手できたのは平岡さんが初めてジャズに言及した作品である『ジャズ宣言』という本です。

「われわれは感情をこころの毒液にひたしながらこっそり飼い育てねばならぬ。身も心も智慧も労働も叩き売って一向にさしつかえないが、感情だけはやつらにわたすな。他人に与えるな。真の感情を持つ者は現在あまりにも少なく、人間を定義して感情の動物というのはあくどいドグマである。現代人の感情はけもののレヴェルに達していない。また感情を制御するものは理性だとする立場も悪辣なドグマである。感情を制する者は感情である。(略)現代において、真の感情をもつ者は、破壊的か、自己破壊的か、この二つにひとつしかない。(略)感情はより大きな感情のなかでしか揚棄されない。感情はより大きな感情へとふくらみたがる自律的な法則性をもっている。そしてこれは正当である。」(出典:平岡正明著『ジャズ宣言』(初出1967年)アディン書房 25~27項)
平岡さんの文章は自信と怒りに満ちていて好きです。改訂版の巻末で評論家として先輩にあたる相倉久人さんがコメントを寄せています。

「〈どんな感情でも、感情をもつことは、つねに、絶対的に正しい〉という強烈なアジテーションとともに始まるこの“宣言”がたたきつけられたときのジャズ界のショックを、いまでも私は鮮やかに思い起こすことができる。時あたかも、アメリカの長い暑い夏が、かつてない勢いで燃え上がろうとしていた1967年の春であった。」(同、291項)
相倉さんのいう「アメリカの長い暑い夏」というのは社会騒乱が頻発したことをおっしゃっているのだと思います。ケネディ暗殺(1963年)以後、公民権法が成立した60年代後半のアメリカでは、黒人による差別撤廃運動が終息していき、ベトナム反戦運動が大きな問題となっていました。

僕は以前まで奴隷解放後アメリカの白人による有色人種隔離が強かった社会のなかで生きる黒人たちが、苦しい感情をおさえるために音楽をよりどころにしたのだと思っていましたが、平岡さんのジャズ宣言と自分の経験を見直した今、感情はぶわああああと爆発させるべきものだとわかりました。
富山大学経済学部と、富山大学ジャズ研究会に籍をおき、警備のバイトをやらせてもらっている現在、この社会環境でしか感じることのできない感情というのがあります。それを音楽にいかすもころすも僕次第であり、感情をおさえつけるようなことは今後絶対にしてはいけないと思います。

すばらしい本を紹介していただいた小倉先生に感謝するとともに、平岡さんのジャズ宣言その他をよく読みこんで僕なりのジャズ観をうちだせますように。小倉先生から平岡さんの『ジャズよりほかに神はなし』という本も紹介されたので今度買おうと思います。



鎌倉翔太

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